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ラーメンの脂とマグマ溜まり

 「こってり背脂たっぷりラーメン」に代表されるように、ラーメンのスープの表面には円盤状に浮いている脂(アブラ)がつきものです(図1)。
 ではアブラはなぜこのような形になって浮いているのでしょうか。それはアブラとスープ、そして空気のそれぞれの密度(密度とは単位容積あたりの重さをあらわすものです)の大小関係から発生する浮力のつり合いがはたらくからです。
 アブラはスープより密度が小さいので、スープから上向きの浮力を受けます。そのためにスープの中にあるアブラはスープの表面に浮上します。そしてスープの表面では浮力と重力が釣り合う形になってアブラが浮くのです。しかし、なぜアブラは空気中に浮上しないのでしょうか? アブラは空気より密度が大きいので、空気中では下向きの浮力を受けるからなのです。

ラーメンに浮くアブラ
図1 ラーメンスープに浮くアブラ
このようにしてラーメンのアブラはスープの表面にとどまるのです。そしてアブラのあの円盤状の形はアブラにはたらく重力とスープから受ける浮力が釣り合うために必要な形なのです(図2)。
 では、地球の中でどのようにしてマグマが上昇してくるのでしょうか。そして、火山の地下ではどのような形でマグマがたまっているのでしょうか。
 これらの地球内部のプロセスにはラーメンスープ中のアブラのふるまいとおなじ要素が働いていると考えられています。地下深部で発生したマグマはその周囲の岩石より密度が小さいので、上向きに浮力を受けて地下数キロの浅い場所にまで上昇してくると考えられています。
ラーメンのアブラとマグマだまり
 図2 ラーメンのアブラとマグマだまり
マグマがラーメンのアブラに、周囲の岩石がラーメンのスープに相当するのです。しかし、マグマは多くの場合にはそのままの勢いで地表に飛び出してくるわけではなく、マグマと周囲の岩石の密度が等しくなる深さで一旦止まると考えられています。この深さがラーメンスープの表面に相当するのです。
 そうすると次は、マグマはどのような形の広がりでたまっているのだろうか、ということを知りたくなります。実はこの問題は火山研究の最先端の一つでもあります。いま、まさにマグマが動いている火山の地下がどうなっているのかを見たい!ということで多くの研究者が火山の地下構造探査に取り組んでいます。
 地下構造を調査する方法の一つに、地震探査といって人工的に発生させた地震を観測する方法があります。周囲に比べて地震波速度が異なる場所があると、地中を伝わる地震波の一部が地表まではねかえされてきます。地震探査ではこのような地震波をしらべるのです。地下のマグマは地震波速度や密度がその周囲の岩石と異なることが予想されます。
 日本では地震探査を使って火山の地下を透視する研究が1990年代中盤から進められています。図3はその研究の成果の一つで、人工地震をつかって九州中央部に位置する阿蘇火山(図4)の地下を透視した結果を示しています。図3で阿蘇山の地下にある緑色の雲のようなものは、地下の地震波反射面を表しています。反射面はみな平たい形をしています。この直上で掘られたボーリング孔内部の温度計測から、反射面の分布する深度では摂氏800度以上の高温になっていることが推定されています。これらの反射面のなかにはマグマによるものが混じっているのでしょうか? もしマグマだとするとマグマだまりの天井が平坦であることを示しているのでしょうか? やっぱりマグマだまりはラーメンスープのアブラと同じ形をしているのでしょうか?
 このような反射面群の特徴が阿蘇火山特有のものなのか、それとも他の火山でも見られるものなのか、それとも活火山だからこのような特徴が見られるのだろうか、答えを見つけるために他の火山の調査もつづけられています。
阿蘇火山3次元地震反射断面
図3 阿蘇火山3次元地震反射断面
 
阿蘇火山(北より)
図4 阿蘇火山(北よりのぞむ)

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秋田大学 工学資源学部 地球資源学科
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